関ヶ原〈下〉 (新潮文庫)



関ヶ原〈下〉 (新潮文庫)
関ヶ原〈下〉 (新潮文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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意外な読後の爽快感!

既に、誰もが知っている関ヶ原の合戦の勝敗、その裏に数々の裏切りがあったということ。そして、それらは、家康を筆頭とする東軍陣営の老獪さから出ていること。これらは、小説を読むに際しては、いかにも面白くなさそうな題材なのですが、結果的には、大変面白く読めました。
その理由としては、「利」と「義」という対立軸を据えて、この合戦が描かれていることがあるのではないかと思います。即ち、人間は「利」で動くものだとの判断で、豊臣方の大名たちを切り崩した家康。いや、人間は「義」で動くものだと最後まで信じ、結果的には、諸大名の裏切りで敗れてしまった三成。
確かに、関ヶ原の決戦は、家康側の勝利に終わりましたが、最後まで「義」を貫いて死んでいった三成、勝利に加担したものの裏切った結果、後味の悪さを残した諸大名を見ると、人間、いかに生きるべきかまでを考えさせえてくれる本でした。


三成ならずして

三成は、義をたてに最後まで正々堂々と戦います。
一方の家康は、三成の義を利用して謀反を正当化していく。
三成が極めて有能で、義に忠実だったからこそ、
家康の対極となり、謀略にことごとく嵌っていく。

三成ならずして家康の天下はなかった。

そんな三成を見事に描ききっています。
関ヶ原の合戦決着から280年後の幕末まで

 下巻では遂に関ヶ原の合戦の始まりから決着まで、そして石田三成等の処刑までが描かれています。
 上中下巻を通してまず感じたことは人は義では動くものではなく利で動くものだということです。これをよく理解していた家康が勝ち、豊臣家への忠義だけで誰もが動くと思っていた三成が負けた、よく考えてみれば当然の結果なのではないかと思います。そして、人間の本質というものはたぶん何十年、何百年経っても変わることはないのだろうと思いました。次に感じたことは歴史は繰り返すものだということです。関ヶ原は羽柴秀吉と柴田勝家が織田信長の跡目争いで戦った賎ヶ岳、そして280年後の戊辰戦争と同じような気がします。関ヶ原時での家康・正信にあたるのは賎ヶ岳では秀吉・官兵衛、戊辰時では西郷・大久保・岩倉といった所でしょう。
 戦国史に興味がある人にはぜひ読んで欲しいです。
 
文句なしに楽しめる

関ヶ原といえば、天下分け目の戦さとして知らない人はいないくらいに有名である。
徳川家康率いる東軍と石田三成の西軍。この小説を読んでいると、狸と狐の謀略合戦、スパイ合戦であったというのがよくわかる。根回し戦というべきか。

この小説の中で三成は、人望無く、気配り無く、横柄者として描かれている。自分の固執した思いにとらわれすぎ、人心を読めず、人を惹きつける魅力がなかった。

反して家康は、本多正信という謀略家と共に着々と根回しを進め、次代の盟主として自己を創りあげてゆく。

藤堂高虎の諜報家としての役割や、寝返った小早川秀秋のおろか者ぶりは戦を知る上で興味深い。福島正信の荒々しい気性、島左近の卓越した軍師ぶりには、教科書には決して出てこない裏側が見えてとても引きこまれる。

三成は敗北が決まって単身、落ちるまで三成であった。捕らえられて斬首されるまで三成だった。19万石の領主として民部治世に長け、領民からは思慕された面もあったようだが、うぬぼれと病的な正義感がなければ、一生を平穏に暮せたかもしれない。ある意味で律儀で義をもって、その一生を貫いた。家康がプロデュースする企画に乗せられて踊らされた。家康は天下統一のために、この芝居が必要だったのである。

そうして家康の思惑通り、関ヶ原の戦いは、秀吉の遺した遺産を消し捨て、時代を変える転機として人々の心に残った。
今も生きている関ヶ原・・・

仕事柄、月1回は関ヶ原を通過する。
今までは通過するだけであったが、本作を読了後、導かれるが如く関ヶ原に立つ自分がいた。

3月のうす曇りの肌寒いなか、そのかつての激戦地はあまり民家もなく、なにか神聖・不可侵の雰囲気がする不思議なエリアであった。
三成の陣跡、家康の陣跡、そして最期の激戦跡に、男たちの怒号、恐怖、歓喜、痛み、哀しみ、そして馬蹄の音、陣太鼓が鳴り響いた、
かつての痕跡がグラスについた指紋の如くベッタリと残っている感じがした。

最期の激戦区の北西背後にある伊吹山は、その頂きに雪を被り、この未曾有の
大戦(おおいくさ)を見下ろし眺めていたはずだが、なぜかその表情は冷たく見えた。
 三成は敗れ、髷と衣装を農民風に変え、心身ボロボロのまま伊吹山方面に一人で落ちたという。

いまも関ヶ原は生きている・・・。





新潮社
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