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関東大震災 (文春文庫)
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| ジャンル: | 歴史,日本史,西洋史,世界史
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震災に端を発する「人災」のあれこれ
関東大震災の前に、関東地方にはかなり大きな地震がしばしば起こっていたらしい。これを大地震の予兆と考える今村と、それを否定する大森。二人の地震学者は真っ向から対立した。物語は、この「権力争い」を中心に進んでいくのかと思いきや、大震災についての、事細かなレポートが展開する。
「自分は関東大震災について知らなさすぎた」というのが、読後の感想である。
学者の良心と国民の評価
本書は、関東大震災の記録文学である。本書の出だしは震災当時の
地震学の権威大森房吉と今村明恒の次に起こる東京大地震についての
論争から始まっている。この二人の争いは本書の一つの骨格をなすもの
である。学者としての立場を考える必要のある大森と、自由に発言できる
今村の描かれ方は好対照になっており、震災後の両者への評価の激変は
印象的である。
震災で明らかになったのは日本人の「権威」の言葉に影響されやすく、
冷めやすいと思えば、事件が起こると蒸し返す。「非常時」には他人を
省みずに、ひたすら自己の保身に走り、そのためには他人を攻撃する
こともためらわない。また日頃の不満を晴らさんとばかりに立場が
上の人や社会的弱者に厳しいという性向である。
また、震災後「英雄」に祭り上げられた今村は発言に注目されて、
今までのように「学者の良心」を自由に発揮できなくなった。筆者は
今村が口をつぐんで無力感に襲われる姿を描いている。これは太平洋戦争へ
向う日本の姿と重なって見えた。
火災の原因第一位は薬品の発火によるもの
昼時の地震で台所から出火したため被害甚大であった、という説をお聞きになったことがあるのではないだろうか。もちろん小生も父母からそう聞き及んで疑いもなく今まで過ごしてきた。
吉村氏は史実を元に淡々と、火災の原因第一位は学校や病院などに保管されている薬品の発火によるもの、と書いてみせる。
あたかも流言飛語が人心を惑わせた恐慌状態の恐ろしさをそれとなく暗示するかのようではないか。人の口に戸はたてられない。怖いものは地震だろうか、火災だろうか。はたまた・・・。
人はどう地震に対処すべきか?
地震による直接の被害もさることながら、その後に起こった火災が
犠牲者の数をかなり増やしてしまった。逃げ場を失い焼死する
人たちの姿は無残としか言いようがない。また、地震直後に起こった
噂や風潮は人々をますます混乱させていく。人間の集団心理という
ものの恐ろしさをまざまざと見せつけられた。地震直後、正確な
情報の必要性が強く感じられる。地震はいつ起こるか分からない。
大地震が起こったとき、はたしてうまく対処できるのか?80数年
前の関東大震災、そして近年起こった阪神大震災。そこから学ぶべき
ことが、まだまだたくさんあるような気がした。
言葉にできない脅威
まだ私が幼い頃、祖母が関東大震災の話をよく聞かせてくれました。 幼い孫にどうにかして地震、そしてそれが引き起こす火事の怖さを伝えようとしていたのだと思いますが、 祖母はいつも何かもどかしさを感じていたように見えました。 本書を読み、そのもどかしさの一端が分かったような気がします。 その当時の恐ろしさ、パニック、混乱を表現できる言葉が見つからなかったのではないかと。 いくら強い言葉を並べてもその恐怖のかけらにもおっつかない、それがもどかしい素振りに出たのではないかと。 本書は関東大震災を体験された方の証言や当時の報道をもとに被害状況や社会情勢を淡々と語っています。 あまりの凄惨さにややもするとフィクションを読んでいる気になってしまうのですが、 それが現実に起きたことだと思い返すたびに溜息をつかざるを得ません。 私が本書を通し、活字から受けた脅威ですら言葉には表せません。 「被服廠跡では、逃げようとしても倒れた人が服を掴んで離さなかったんだよ」 そう語った今は亡き祖母からもう一度、話を聞きたくなりました。
文藝春秋
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